今回は百合ヤンデレときたか。

 正直、この本は私にとってかなりの危険物だ。
 何がまずいって、序盤数行でいやな予感しかしない。だいたい各エピソードのあとに待つ悲劇が見えてしまう。小学生の頃からヤンキー系少年メディアなんかに目もくれず、少女メディアばかりに触れていた上に、リアル妹持ちで、中高ともに吹奏楽部で、いわゆる「女の園」の汚さも知っている。そのせいか、各エピソードの少女たちの痛みが、一般的な男性読者の2割増し程度で共感できてしまう。前作では「あかんこれ婆さんに無警戒なのと妹がヤバイ」(ヘンゼルとグレーテル)は見事読み切った(そしてキモウト万歳と盛り上がった)わけだが、今回のラプンツェルは読んでいて痛々しかった。
 原典のラプンツェルは言うことを聞かなかった。では言うことを聞いていれば幸福だったのか? そんなわけはない。できあがるのは髪に縛られた何かだけだ。何かだけだったのだ。
 創作であるが故に、美しい。だが現実にはきっとありふれた話だ。そして醜い。




 幸か不幸か、黒い童話は少女だけの問題ではない。