真逆の「実録」

 小説ジュニア時代のコバルト文庫が「実録モノ」を出していたのはそれなりに有名だと思うが、なにかと性方面で槍玉に上がるジュニア小説も結局のところ「バーチャルな逸脱」を夢見る少女向けであって規定ジェンダーへの囲い込み路線であったことは不変であった。
 で、ストレートにオトメ路線へ向かったと思われる「実録モノ」は実にマイナーで、俺自身遭遇するまで存在把握してなかったという体たらく。

 はまぞうには引っかかってこないが、これをコバルト文庫にしたものが存在する。先日古本屋で発見したので他の同時期の作品もろとも確保してきた。しかし煽り文がなんともまあ仏書院を彷彿とさせる。


逃げ姫 (集英社文庫―コバルト・シリーズ)

逃げ姫 (集英社文庫―コバルト・シリーズ)

 角川での説教臭さがかなりマイルドになっているのが興味深い。


佐伯千秋『遠い初恋』
 ジュニアを巡る文学研究が進展しにくい理由の一つに佐伯作品の入手困難性があると思われる。富島健夫作品は1990年代に再版されているので手に取りやすいのだが、佐伯千秋作品を読むにはそれなりの苦労を支払わなければならない。結果、門外漢には富島がジャンルを食ってしまうように捉えられてしまう。佐伯も面白いのに。