『大奥』西部劇版+それなんてエロゲ

ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)

ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)

 舞台は極端に男の生まれる率が低い世界。
 この世界において普通の家に生まれた男性は「商品」であり「姉妹たちの(共有する)夫」を得るための交換財産である。さもなくば男娼としてあぶれた女性に「売る」ことになる(ただし彼らを相手とする娼婦もまた存在する)。
 そんなわけなので、生まれた時から姉や妹に強固に防衛される(外の女には銃を向ける、ある意味ショットガン・マリッジの西部劇世界)とともに、婚姻年齢が来ると相手として決まった姉妹(当然女性はあぶれているので大抵年上の姉がいて、また姉妹に年下の娘がいれば別の夫を得ない限り彼女もまた当該男性の妻となる)の元に行き結婚(=姉妹丼確定、基本的に受)という実にエロゲそのものな展開なのである。しかし家制度ががっちり機能しているので、「病気を持ち込むことイコール一家断絶」という教えとともに、「近親相姦による奇形」への恐怖は強く刻み込まれているから実姉妹萌の人にはオススメできない。


 中身は総じてアン・マキャフリィやタニス・リーあたりと同じく「ロマンス寄りのSF」。病気への意識も「中古男はいや」というための装置にさえ見えるのは俺がねじくれているからか。女強盗が男に一服盛って無理矢理立たせてヤると「強姦」なのにいわゆる夫によるDV(姉妹共有の夫だが、この世界は長姉の権力が非常に強いため妹たちの意見はほとんど通らない)に対しては「夜の奉仕」という言葉が使われているのも辛辣といえば辛辣ではあるが、地雷とまではいわないが凡作かなあ。


 それにしても、『月は無慈悲な夜の女王』でもそうだったけど、海外SFには共有型の夫婦が多いように思う。さすがに『月は〜』の場合姉妹まるごとというのはなくて、多数対多数の部族的なものだけども。