兵役欠格者としての萌え。

「萌え」というフレームワーク化は差別の延長線上に存在するのかもしれない
http://d.hatena.ne.jp/ululun/20061125/think0611252

「萌え」ることの暴力性について。
身体欠如萌はまだどうも好きになれない。川上稔作品はやたら欠如キャラいるなあそういえば。


で。
「萌え」られるヒロインは、二次元であることはともかくとして、つまるところ、(主にリアル女性の想定する)恋愛という「戦争」において、市場では員数外に該当するのだという連想が私の中にはある。
以前

*2:たとえ当該本人に興味が無くともそこに関わる同性の圧力及びいじめは、その資本主義の場に参加しないことを許容しない。たまたま諸事情(病気である、ロボットである、実は男であるなど)により同性からその圧力の対象外としてハブにされていることを考慮しないで純愛もへったくれもあるかw。
http://d.hatena.ne.jp/Kadzuki/20051029#p2

と、「諸事情」の存在を書いたことがあるが、この「諸事情」こそ「員数外」。
「戦争」における兵役欠格かラインギリギリの丙種通過である。そして彼女たちは兵役欠格であるがゆえに「戦争」の狂気から隔絶しており、あるいは丙種採用であるからこそ過度の狂気に至る。
「戦争」の狂気、つまり(リアルとの比較文脈で登場する言説を中心に)資本的な恋愛市場に囚われていないことが純愛であり萌なのだとしたら、やはりそれはなんらかの欠格事由に対する感情の延長線上にあるとしか言いようがない。
個別具体的には、みさき先輩の「盲目」、マルチの「生殖不可能性」*1といったクリティカルなものから、従来は員数外だった「無口」「眼鏡」というものが相当する。社会的なものとしては自由恋愛とは無縁のものとされてきたお嬢様等の「階級」的な要素がそこに加わる*2
そして彼女らは、単に員数外だから狂気から遠ざけられているに過ぎないのであって、狂気を「自己の選択によって拒否している」のではない(私が『電/波男』に対して持った最大の違和感である)。
恋愛という名の「戦争」から「排除される原因」に萌えているのであれば、それは確かに差別の延長線上なのだろう。


一方、丙種組。彼女らは基本的に戦争におけるアドバンテージを持たない、あるいはハンデを背負っている。低身長、貧乳といったオーソドックスなものはもちろん、今なお員数外ギリギリの内気や無口、主人公側の認識(あまりに近いのはアドバンテージに見えるが実はデメリットである)、先述の階級(それはメイドなどに限らない)、加えて血縁者という要素も。
リアルの戦争において本国兵よりも外地兵の勇猛さ・残虐さが際だっているのと同様に、彼女らは一度「戦争」の「狂気」にふれるととことんまでいってしまうことがしばしばある。勝つためには、優秀さを見せるためには、並の攻勢では止まらない(いやまあそれぞれの素質もあるだけどな)。それは必ずしも殺るか殺られるかの世界まで行ってしまうことに限らない。そんな世界に逝ってしまった未亜や言葉は別格としても、light『Immitation Lover』の円香のような「手段に過ぎないセックス」、August『夜明け前より瑠璃色な』の麻衣のような「極端すぎる乱れ方」といった、(アドバンテージ創造のための)ハンデを埋めるある種の無理に向かって疾走してしまうのも同じである(この両者の場合は性的魅力)。そしてこれらの結果更なるハンデ、引き要素を持ってしまったヒロインに燃えるのもこれら員数外要素への感情*3


これらの欠格事由・丙種組の「諸事情」に萌えることを「差別」と言ってしまうと今度は三次元から「サベツリケンボクメツー」と声が挙がるかもしれないが、そもそも恋愛という戦争自体が「勝てそうな相手に仕掛ける」ものであるわけで、格下意識の存在は二次元でも三次元でも否定できない気がする(過去ログhttp://d.hatena.ne.jp/Kadzuki/20050105#p3)。

もう少しその辺勉強するかな。


しかしこの2年、視角的にあんまり成長してないことがよくわかるったらもう。w
(以前mixiけよりなネタを一年前の同じ日に同じような書き方していてビックリしたw)

*1:light『Immitation Lover』は、自ら員数外と規定して自身の恋を否定する響と、響を「女じゃない」と否定する円香が交錯する。

*2:そのくせ階級が存在しないと盛り上がらないのがラブロマンスカルチャーの困ったところである。階級が存在するからこそ盛り上がるカルチャーは実のところエロゲ側にももうひとつあって、陵辱系はその階級要素を最大限生かしている(それを突き詰めると、革命なんてのは普段手の届かない女を無理矢理ヤる機会であり手段でしかないんだろうこのスケベめとキッツイ突き放し方も可能である)。

*3:「リアルではこんな娘はイヤだ」というやつですなw。