妄想エンジンと戦後児童文学とエロゲとレス

 ええい、結局私が一番聞きたかったことの答えはないのか!w


 しかし、今思えば「だれたエロゲの中盤を無理矢理楽しむ妄想エンジン」をそのまま全方位で使ってるというのも困った話。
 二次元や二時間ドラマのサーキットや湾岸走るための車(悪魔のZとか相沢スープラとか)でリアルという公道走って近所のスーパーに買い物行くみたいなもんだ。二次元は二次元でもほのぼの系走るには全く向かないけどなw。


 でも実際使えてしまうんだよこの妄想エンジンは。リアルの生活を著しく阻害するけど。
 「恋愛」は「戦争」そのものだって言うのは、当初ラブロマンスカルチャー*1側の「恋は戦い」というフレーズに現れる「戦術面」について言っていたものであり、ミリタリーカルチャー式の仮想戦記めいたプロセスで動く妄想エンジンは、本来この領域で転がすためのエンジンだったはずなんだ。
 ところが、「恋愛」とはすなわち「戦争」であることが「動員」の構造面でもまったく同じだと気付いてしまった*2
 以前それ散るのさくっちを「爆沈する陸奥、装甲破られるような攻撃も受けてないのに勝手に撃沈されてやがってつまらねえ」なんて言ってたのは実は微妙に外してて、さくっちは単なる「志願兵」でしかなかったんだと悟ってしまった。八重樫も同類。動員規模の話になるとエロゲキャラなんて兵器ユニットどころか赤紙リーチのそこらの一般人でしかない。
 恋愛への動員体制というのは、リアルにおいて赤紙リーチとそれを誇らしく感じる「当事者以外の」群衆でひしめく(志願兵はもうそのへんにいないか既に死んでいる)銃後をそこに再現しているだけなのである。


 長いので以下省略記法

 こう考えるとエロゲってのは二種類の戦争表象を複合させたものだということになるんだな。前にも戦争映画とエロゲの類似なんて書いたけど、このころは動員構造まで踏み込んでなかった*3。一方は銃後の描写であり、もう一方は戦場の描写である。ひしひしと歩み寄る空襲と総力戦を前に、周りの男達が赤紙に応じたり志願したり帰ってこなかったり隣の姉ちゃんが機銃掃射で死んでたり、ってな描写がルート分岐前。入営して訓練等の障害を越えて初撃破・初撃墜から教官や同期に一人前と認めてもらうまでがルート分岐からエンディングだ。乱暴に表現するなら戦後(反戦)児童文学の表象と、戦後戦争漫画の表象の複合である。「入営」を境に妙に進展する腐れ縁なんてのはその体現者であり、もっと身も蓋もなく言えばツン期とデレ期である*4
 この連続性のなさこそ日本の児童向け戦争表象の特異性*5でもあるわけだが、エロゲもまたこの悪しき伝統を受け継いでしまっている。ルート分岐した途端人格変わってるだろおまえ、なんてのはその最たる例だし、ヘタレがいきなり漢になるのは「兵役で男らしくなる」「チャイルドソルジャーの銃はすなわち男根の象徴である」なんてのと同様の気持ち悪さがある。「戦う理由ができました」の補正はかかるにしても。そしてこの気持ち悪さが、さっきのさくっちとか衛宮士郎あたりの「落差」として*6、エロゲ的には「必然性のなさ」として現れる。


 ところが、いつの間にか純愛系のエロゲー市場はこの「必然性のなさ」を受け入れてしまった。赤紙からあとの生々しさの作り込みを放棄してしまった*7。もちろんハートマン軍曹はいない。そんなもんリアルだけで十分だし。
 で、いきなり『トップガン』風味。それでまずけりゃ『エリア88』の回想の米海軍新人ミッキー。過去ログ振り返ると四月にも俺はこんなこと書いていたが、まさにそんな感じ。

主観的な物言いだけど、恋愛ものという外形を持っていても、プレイヤーの「もうダメだ、堕ちたわ俺」という感覚(あるいは「主人公、撃沈されました。白旗を揚げて演習域外へ」という判定が下る瞬間)の誘発とエロシーンへの展開が解離しすぎてる、とでもいうのか、一番ツボに入ったヒロインのルートを進行しているのに「堕ちない」。「堕ちる」ところまで持ち込めていないのに様式として消化されるエロシーン。で、プレイヤーは断絶の向こうに置き去りにされレッツゴーCtrlキー。作品自体が連続線を非連続にしているんだからどうにもならないんじゃないか。
http://d.hatena.ne.jp/./Kadzuki/20060411#p1

 ようやく俺自身このころに書いていた「連続線」が「非連続」になっていることの構造がわかったような気がする。「なんだよ最初から別の話じゃしかたねえな」と。コンシューマ版の方がまとまっている、出来がいい、という評価が出てくるのは「一本の話」だからであって、「二本を無理矢理繋いでいない」からじゃないのかな。


 で、ここまで考えて不意にぞっとした。あくまで私の妄想だが。
 今現在日本のオタク文化ラブロマンスカルチャーが海外に流布していることについて、将来的にこの不自然・不連続を考察対象にするような場合、それは戦後児童文学に一斉に襲いかかることとなるかもしれない。砂田言うところの「責任」が解体されるのはそのときなのかも。
 あともう一点。斬殺ブーメランになるのは向こう側だけじゃないことは言うまでもない。俺も含めて使用には注意、と。


以下レス。

diktator 『瞳ちゃんの台詞自体が正確には「浮気したら、○すわよ!」なのである意味そのまま。しかしとらハ2の隠しルート分岐で、それは耕介だったということとそのまま1に繋がるある描写があるあたり一応安全といえば安全なのかしら。
あと非モテ云々は結局定義によると思うのだけど、とりあえず職場のお姉さま方に付き合わされる立場は我々の業界では御褒美ですw』

 ちっ、生きてやがったか……(何。
 2だけはあまりやりこんでないのよね。なぜかというと当時のパソがだめだった、ってことだけど。なんか3より重くてね〜。今なら快適に動くかな?
 で、閣下の趣味はおいといて、とw。私にとって職場のお姉さま方は「マスターアジア」や「ランバ・ラル」みたいな存在なので尊敬はしても萌えはしません(笑)。

*1:私はミリタリーカルチャーと対応してこの言葉を使っている

*2:ここで書いたのはhttp://d.hatena.ne.jp/./Kadzuki/20060706#p1が初出か

*3:http://d.hatena.ne.jp/./Kadzuki/20060505#p2http://d.hatena.ne.jp/./Kadzuki/20060523#p3

*4:……そりゃ物語の起承転結を一人で代行してるんだから作りやすいし流行もする罠w

*5:つまり砂田や山中あたりの批判するところに相当するのかな。また強制連行神話の上に為されたものではあるが、後藤の『紅玉』はこの連続性に挑んでいる感がある。いや根拠がどうこう考えなければ結構いい話なんだけどね……「もいだ分だけはもっていってくれ!」の叫びとか、かなり響く。

*6:その意味ではキングオブヘタレ孝之ちゃんは実に正しい。天川さんルートの漢へのスライドも実に見事である。

*7:最近バックラッシュのせいか「制御された生々しさ」は大人気だけどなw。