プロジェクトXの艦隊 猛将奮戦す!
一時の流行かと思えばいつの間にか一ジャンルになっていた架空戦記。まあ一部の火葬戦記も含むが、最近このジャンルの性格が変わったなと思う。
元祖にして諸悪の根元たる、10年前の紺碧の艦隊―運命の開戦 (トクマ・ノベルズ)を筆頭とした当時の作品は、このジャンル特有のルサンチマンとご都合主義はさておいても、戦略の主眼は地政学であった。
かなりまともと評されている激突上海市街戦―覇者の戦塵1932 (カドカワノベルズ)にしても、資源面で「修正」が入る以外は、やはり地政学であり経済学であった。
しかし一ジャンルを形成してしまったあとからの作品は、「船魂」ネタや長嶋巨人軍や空飛ぶ戦艦なんて確信犯的お馬鹿さん、あるいはガンバスター的なパロディ満載作品(中には比較的まともなのに井上成美を倉庫の上で高笑いさせるようなのもあるが(笑))を除くとしても、どうも組織論、リーダー論(英雄論ではない)にシフトしているようである。
ラノベ的にわかりやすいのはこれ。
- 作者: 鷹見一幸
- 出版社/メーカー: 学研
- 発売日: 2002/06
- メディア: 新書
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
異常なサヨク自虐教育への反抗から読みあさった中高生*1やノスタルジーとルサンチマンから読みあさった戦中派といった読者層は、今や普通のサラリーマンを主力とし、反米反朝鮮反中国カタルシスは、プロジェクトX的現場努力と(苦労をわかろうともしない)無能上層部をけなす*2カタルシスへと変容している。サヨクが批判してきたジャンルが、今では労働現場と中間管理職を主軸とした実に左翼的なものになっているという笑えない話。