禁断症状とおとボク体験版

 
 即日完売の煽りを喰らってしまったので体験版やり直してみたり。
 通常版流通の暁には月鎌視点から考察していきたいなと思っているのだが、とりあえず体験版(2話分)について目に付いたことを再掲。

 祖父の遺言で(『マリみて的』あるいは『笑う大天使』的でソフト百合系)女子校に放り込まれる主人公、というべたべたな物語である。体験版(2話分プレイ可能)の印象からになるが、主人公はお約束通り「女装がばれないほどの素材」であり、外見的には完全に女性として通学し、寮内(少人数だからばれる危険も少ない)で生活することになる。そしてこの局面で主人公を縛るのはやはり細々とした行動についてのジェンダー的観念に他ならない。

 男性である主人公が、機密性およびアイデンティティ同一性の問題から、自己を男性であると規定するためにはいきおい「マッチョ的男性観」にシフトせざるを得ない故に、「女性観」に基づく行動や、結果として女性的であるとされる行動を反射的に行った場合の葛藤がギャグの一環として描かれるのである。

 12月26日分で概説的に書いたのが上記。
 続いて二話までの段階で二点。

 主人公が自身を男性として規定し、また男性であれば当然として受け止めているのが明確にわかる最初のシーンはやはり第一話の「バスケットボール」のシーン。男性である主人公が女性に混じってバスケットボールに参加し、ロングシュート(選択肢「シュートする」)を撃ち込んだあと、内心描写で「これって、女子に混じって男子がやっているってだけなんじゃ」と書かれる。
 つまり、主人公の内側では、バスケットボール等の競技において、男性は女性よりも有利であることが自明のものとして規定されていることが明らかにされている。たしかにバスケットボールのボール重量は結構あるし、距離によっては女性が軽々と放り込めるわけではない局面もあるだろう。しかしドリブルで切り込んでシュートする上でのチャージ行為でもしない限り、バスケットボールにおける男性の優位性なんてどこにも無いというのが私の持論である(故に中学高校の体育の授業でも、体格に恵まれず運動が苦手な男子生徒が唯一可能な教員への自己主張は、3点圏からのシュートを成功させることくらいだ)。

 続いて、デモムービーにも含まれる「母性本能」の一こま。主人公にせよ、まりやにせよ、「母性本能」なるものを女性特有のものとしてしかみていない感触がある(私は「母性本能」なるものの存在さえも否定する立場の人間である。そんなものが人間の本能に含まれているなら虐待死など起きない。もっとも、人間は同種殺しをはじめそもそも本能が狂っている生物だというなら話は別だが)。あまつさえ主人公は「母性本能って……僕、もう社会復帰できないかもしれないなあ……」とさえ言ってしまう。男性は保護・庇護的な衝動を持ってはいけないとでも言うつもりなのか、と糾弾するつもりはないが、どうも違和感を感じてしまう。
 たしかに「社会」は未だ男性が女性側の領域へ踏み込むことには両性共に冷酷である。女性が特権を行使し、一方的に男性領域を蹂躙することには寛大であっても、その逆は認められない不平等条約治外法権である。一方で女性領域の技術・性質を獲得した男性は男性からも女性からも拒絶される。だからといって主人公にこの言葉を言わせていいものか、という不信感がどうにも拭えなかったのだ。

 で、体験版終盤のエロシーンについては……とりあえずこれについては製品版後にまとめてみようと思っている。「とってつけた感」が強すぎるだとか主人公手慣れすぎてて別人格じゃねえのかとかいうのもあるが、一子に関しては他キャラでは必須となる「正体バレる過程」が物語上抜けているため、現時点では保留にせざるを得ないので。

 さて、バナー貼っておくか。