下僕ブーム

愛情評論

愛情評論

 本文の中に、先日取り上げた「TINAMI」でのインタビューを引いた一節があり、「おや?」と思う点があった。男性における「よいメイド」、すなわち借金であるとかの男性さえ不自然と感じる抑圧的事情を持たないものは(性的要素を除けば)金銭、女性における「下僕」は愛、という結合理由の二分法である。
 彼女の言う「金銭で結ばれた関係のメイド」とはインタビューからも『雛鳥の囀』のメイのことである可能性が高い。しかしメイとてゲームの進行上(前作に比べて経営がシビアだからだが)、早急にイベントを発動させて金銭関係から疑似愛情関係に移行させておく必要がある。もちろん鳥シリーズ前期二作の主人公であるフォスターが完全に金銭経営重視の主人公であるとはいえないことは、特に『殻の中の小鳥』でのクレアルートの陥落っぷりからも明白。この二分法は不安定きわまりないものと云うほか無い。

とらわれの身の上 (1) (花とゆめCOMICS)

とらわれの身の上 (1) (花とゆめCOMICS)

 ところで『とらわれの身の上』での「下僕」は当初本人の意思を無視した「呪い」である(しかも強制でありながらそれが自発的行動として発生する)。先祖のあっけない転落ぶりからも解るように、その強制力は新條系エロ少コミの「強姦→愛」どころではない。
 ゆえに呪い・魔術から愛への移行を許容する見解と、金銭的・性的束縛(「契約」ではない)から愛への移行を全否定する見解の同一性はどうやっても見いだせないのは私だけだろうか。
 同時に、性的搾取関係や金銭関係に全てを集約し、(メイドブームの元祖火付け役であるはずの)クレアのような特殊事情による「メイドという境遇の選択」がまったく議論に登らないのに少々違和感を感じる(←それは個人的趣味だろ)。背景の特殊事情についてはANIM『終わらないメイド達の夜』が設定として面白かったが未プレイのままにロットアップしてしまった。残念である。

 葛西伸哉『アニレオン!』の考察もなかなか面白い。一般人にはついていけないところも多いが。