正統派にして変則のユーモアミステリ

……だと理解しても問題ないと思う。怪盗だけど。

怪盗レッド(1) 2代目怪盗、デビューする☆の巻 (角川つばさ文庫)

怪盗レッド(1) 2代目怪盗、デビューする☆の巻 (角川つばさ文庫)

 うん、実にあざとい(悪い意味ではなく)。全体として女子向けという印象を持ったけど、ケイ豹変のギミックにより主導権の往還がスムーズにいっているので男子女子どちらにも違和感なく読める作品になっている感がある。主導権取りたい女子にも男子にも、あるいは主導権取られたい女子にも男子にも。
 で、「子どものツボをついてるなー」と思ったのが、科学的な助言が為されるところ。やっぱり探偵(怪盗の片割れなんだけど、怪盗と探偵が表裏なのはもはや説明するまでもあるまい)とは「博覧強記であること」なんだなーということを再認識したのと、子どもの大好きな科学的な解説をさせることによって、中盤のチャットなんかよりも遙かに単純に「こいつすげえ!」と思わせているのはさすがに上手い。加えて、そこで終わらないで「それを実行可能にする力」を主人公少女に持たせているから、「結局男性にケツ持ちさせてる」ロマンス寄りミステリを蹴っ飛ばしてる感が個人的感想として爽快だった。ある程度は児童書というか怪盗モノなりのご都合はあるんだけど、不思議と結構押し切れてしまう。

 次はみらい文庫の方いきますかね。

ゴールライン (新・わくわく読み物コレクション)

ゴールライン (新・わくわく読み物コレクション)

 一方、これは真逆の方向に「あざとい」というか、完全に大人の方を向いた「狙い書き」という印象しか受けなかった。何をしたいのか分からない少年がスポーツに打ち込み、なぜやるのかという理由を見つけ……なくてもいいやという結論にたどり着き、ご都合的に全国優勝するという、ジャンプですらここまでやらんぞな話。これでは本読み少年にはまず受けないだろうが、文字の本を読ませたくてしょうがないザアマスな方々には受けたかもしれないな。
 そして前掲黒猫さんとともに検討した結果、児童書における「姉」という存在の(だいたい)悪影響というものを考えるなどw。てか使い勝手の実にいい去勢装置だよな、児童書の姉。