国籍法騒ぎも少し収まったようだな

 厳格運用がされないならどんな法律作っても同じだ、と俺は考えているので正直文言にはあまりこだわっていない。


 俺が気になるのは「日比ハーフ」の「ハーフ」の部分のアイデンティティである。
 母親が日本国籍を望むことは、はたして本当に子ども自身のためになるのか。たしかにそこにあるのは生存そのもの……いまだ幼児死亡率の高い国においては切実である。しかしやはり引っかかる。外人のままで権利だけヨコセとわめくバカどもがどうこうという問題ではなく。


 A人とB人の間に生まれたのは、A人でもB人でもなくC人であると考える俺にとって、最終的に「制度上」どちらを選ぶのかはやはりC人の問題だと思うのである。その上で生命体としてどちらであろうとするのかは避け得ない問題であるにせよ。そして、C人という存在が時を経ずして消えるにせよ。


 藤原祐『ルナティック・ムーン』は「チシキジン」とやらが見れば簡単に民族・階級・出自の対立に吸収してしまうのだろうが、俺はどっちかというとそこよりも主人公ルナ・イルの姉ルル・イルが叫んだ「私たちは一代限りのバケモノ」という言葉に注目したい。
 さらに言えば、『灼眼のシャナ X』において仮装舞踏会とむらいの鐘の壮挙を愚挙と言い切ったのも、自由と大義との関係での不一致(過去ログ参照)でもあると同時に、ハーフという存在の「脆さ」を見越していたからであろう。


灼眼のシャナ〈10〉 (電撃文庫)

灼眼のシャナ〈10〉 (電撃文庫)