きるぜむおーる!

『萌/える/男』読了。*1
まあ感想の名をかたった願望妄想に等しいので省略記法にしとく。
先日の「行き詰まったネズミ講」という記述についても関わるんだが、読了後「萌え」という概念がカバーする範囲が統一されないまま流布しているように思った。
というか私自身がその概念を総論的なものとして理解していた部分があるわけで、対象を個別具体的に論じそこへ絞り込んでしまった領域*2はすでに、社会学等でいわれる「萌え」という漠然たる領域の外側(あるいはさらなる深み)と考えていた。理由は単純で、そこまで「逝ってしまった人々」はもはや特定属性・キャラについて具体的魅力を語りはじめ、「萌え」という漠然としたタームを使わなくなっていくことにある。

しかし『藻得る乙子』*3の場合、「萌え」は市場的カテゴリではなく「恋愛」そのものとほぼ同列になるせいか、キャラ固定までいってしまっても「萌え」に含まれる。つまり深さに限度がない。もっとも、その曖昧さこそが出入り自由*4で三次元とも両立可能な世界たるゆえんでもあるのだろう。

現実的に社会に許容される限度の深さ、マスコミないしシンクタンクの考える深さ、二次元側住人の考える深さ、それぞれの限度は未だ統一されたものではないわけで、この先がわりと楽しみ。

さて、追記としてアナログ度の問題。
むしろこの本での見所は終盤、マリ見てとオトボクに関するアニマ論だと私は考えている。もっともオトボクに関しては過去ログでもふれているように所詮マッチョリズムの産物の域を出ていないので全肯定する気にはなれないのだが、オタ側の内心に形成されるアニマの女性像という点は、前作『ウェーブマン』*5で俺が持ったような「女性側の自意識に基づく行動の排除に対する違和感」を片づけるのに役立ったと思う。
純愛回路・乙女回路を持つヲタがアニマとしての女性像を内部に構築する場合、記号的に構築された「都合の良すぎる」ヒロインに違和感を持つ(というかそれはどちらかというと抜きゲーキャラ、悲鳴人形として鬼畜ルートに属する物と解してしまう)のは無理もないことである。
生身のヲタが構築する以上、記号の集成としてマグロに徹することは分身として許容できないし、そういうキャラが同性社会においてさえ存続するわけがないことを生身の経験からある程度はわかっている、そういう「(水準以上の見栄えと能力を持ち、非ファッション至上主義であり、ヲタにとって)都合のいい」女性は、同性社会の中であっさりとファッション至上主義ナンパ派に葬られてしまうことを理解しているわけだ*6
必然的にアニマはヲタ自身の分身であるゆえに行動理念はヲタ自身のアナログ思考回路。行動実体は分身が(価値観的倫理的に)実行可能な限定された選択肢に限られる部分でデジタル二次元回路。アナログ的行動を取るヒロインはヲタ自身が「第一に恋愛対象として」許容できるか否かというフィルターを通して判断されると同時に、アニマとしての女性体の価値観にも照らされ*7、共感と拒絶の判断を付けられる。麻生明日菜やオルガ=エアレが許され、(邪悪属性の住人にさえ)柴門たまきが叩かれるのは前者のみならず後者の理由による物であったかもしれない。
……実は大きく脱線していた。気にしないで本題に戻ろう。
男性ヲタがこういった仮想女性体を構築するのが、ごく最近、マリ見て以後だとはまったく思わないのだが、少なくとも構築人口が臨界を越えたことで大きな変化が起こったと俺は考えている。それがいわゆるところの「邪悪属性」や「修羅場属性」ではないか。先日スポーツ新聞入りまで果たしてしまった『School Days』の桂言葉を筆頭とする殺愛ヒロイン群が、ここまで増殖したのも、その影響だと思うのだ。
構築された女性体はヲタとほぼ共通した恋愛観念を持っている。しかも男性の性に対する貪欲さを嫌悪する回路を持っている場合さえある。そんな「内心の女性体」が、これまで主流だった節操なしDQN主人公に対してどういう感覚を持つか……想像は簡単だ。潔癖な回路から構築された彼女たちであるほど、主人公を許さない。泥棒猫を許さない。真剣な回路から構築された彼女たちほど、主人公を離さない、泥棒猫を近づけさせない。そしてそんな行動に移った二次元のヒロイン達に共感し、喝采を送る。*8それが今の邪悪属性隆盛の一因ではないだろうか。

なんにせよ、プレイヤー自身が持つ純愛の欲求(あるいはハーレム的欲求)とアニマが持つ徹底的勧善懲悪構造への欲求(サディスティックな欲求、エロゲという構造に対する固定概念粉砕の欲求も多少はあるだろうw)。当分は邪悪属性・修羅属性的に楽しめそうな予感である(笑)。

*1:また2chに晒されると面倒なので数字板的に検索回避w。欧米でスラッシュノベルなんていわれるのはこれが語源……なんてわけはない。

*2:属性固定の段階と見るか、キャラ固定の段階と見るかは微妙だがw。

*3:また晒さ(ry。誤変換は回避の基本である。

*4:まあ仮に同列に近い位置づけをするならば限度のない深さの奥底から出ることに対して、「おしおきが必要ですね」「裏切り者ッ!」「あなたが一番いらない!」と非難があってしかるべきだし、むしろ俺なんかはその非難と逆襲を楽しむ属性だったりするが、彼女らの多くは非難を行わないように構築されている罠。

*5:また晒さ(ry。強引な英訳和訳も基本である。

*6:もちろんそういう知識経験を持っていること自体が特殊という言説は成り立つわけだがなw。

*7:行動を理解しようとし、当人の立場として思考する場合には、(バイアスも含めて構築された)女性の行動原理に照らしているはずだ。

*8:もっとも、M男さんなどは話が別だが。