たとえ狂気を演じても

現実逃避まっしぐらに研究室から更新中。

名前:ユリーシャ
出典:DARCROWS
CV:なし
属性:内気?

今回のネタはアリスソフトの古典調教系ソフトより第二皇女ユリーシャ。


主人公であるクロードは所属していた王国の騎士であり、二人の皇女、なかでも姉のティアリスと良好な関係を結びつつあった。
しかしそれが彼女の父である王の怒りに触れ、クロードは最前線に送られ……親友を失うことになる。
のちに旧祖国への敵軍侵攻を仕掛けたクロードは、その間に国へと舞い戻り、王が指揮を取れない間の軍師として王宮へ入り込む。ろくに軍備を持たない国を守るには傭兵を雇うしかないが、その費用がない……。クロードは王妃と二人の皇女によって費用を捻出することを提案し、かけがえのない親友を失わせた王への復讐を開始する。


さて、正直なところをいうと、私はもともとアリスソフトにいい感想を持っていなかった。というのも、元が少女漫画・少女小説系列で育った人間だけに、ランスを筆頭とする色欲魔人にも、その餌でしかない悲鳴人形にも(物語としては)好意的になりようがなかったからだ。それをひっくり返したのが、「(えちぃが一枚絵で尺も短い)アリスソフトのなかでも屈指のエロさ」とさえいわれる『DARCROWS』と、ビジュアルノベルの傑作『アトラク=ナクア』だった。
初音姉様についてはいずれふれる*1として、ユリーシャイベントの容赦のなさは、当時の私にとって実にストレートに突き刺さった。ティアリスのイベントが単純に肉と羞恥、支配を鍵とするならば、ユリーシャのそれは人心の暗黒面と嗜虐。無垢と残酷の境界上の子ども、理性を壊された少女たち、燭台、人形。残虐なしに成立しない行為を収集した「費用捻出」イベントは最終形態においてユリーシャ自身が戸惑いながらも嗜虐の側に立つことで終わる。
つまりは、最初のイベントからの変遷も含め、ユリーシャのイベントが漂わせる破滅の香りに私は惹きつけられていたのだ。


エンディング、国を守りきったものの、再び戻った王によって処刑されることになったクロード。その独房に乱入し跨るユリーシャをどうにもできず、二人を生かしたまま幽閉することで物語は幕を閉じる。処刑を阻止するための狂気の演技、幽閉後それを問われ、肯定する彼女は、もはや会話イベントでの、戦争という闇を受け止めかねた少女ではなかった。それはこの手のメディアが必然的に持ってしまう「性」ひいては「処女→女」という構図とは別の形で描かれた成長ではないかと思う。二度と外を見ることのない、隔離された世界と引き換えにした愛は、やはり「強い愛」イデオロギーの支配する女性メディアに染まった私にとって衝撃であったといえる。


……思えばこの頃からヒロインに期待する「想い」の強度・破壊力について桁が二つ三つズレていたんだなあ、とがっくりしてみる今日この頃。

*1:「身の程を知りなさい、豚」